年の頃、20代後半の女性が、キョロキョロしながら、来店してきました。お団子ヘアで、顔はキリッとしたクールビューティー。エスニック風なファッション。
『いっらしゃいませ。』『お伺いします。』と。カウンター越しに椅子に座わるよう、促します。旅行代理店に来るのは、あまり慣れていない様子です。小さな声で話はじめます。
ハネムーンへ行きたい、でも、あまり旅慣れていない。どこがいいいのか、教えて欲しい。本当は、インドへ行きたいと思ったけれど、家族が反対して行けそうもない。家族は、ヨーロッパとか、ハワイに行けばいいと言う。
どこかへ行きたい、旅行したい。でも、どこに行きたいのか自分では分からない。そういう人は、案外多いものです。珍しくはない。単純に、分析するための情報量が少ないからだと思います。だから、判断にきっと迷う。
私は、接客をする時、服装やメイクの仕方、話し方、様々なところをよく観察します。その人が持っている、醸し出す雰囲気や色を。
国にも、やっぱり色があります。その国が作ってきた歴史や大切に引き継がれている文化、気候や自然、地形、全てのことが融合して、国の色を醸し出しています。
何がしたいのか、どんな色を見たいのかを見つめる瞬間を私は大切に接客へ入ります。
彼女を見た瞬間、そうです。『ハワイはないな。』と思いました。かといって、海外へ行ったことがない、慣れてない人をいきなりインドへは、ちょっとハードルが高い。インドは、カオスの国。インドは彼女に合う気もするけれど、まだ早いような気がする。ご家族も安心できて、彼女自身もいい気持ちになれて、笑顔になれる場所を一緒に探すことにしました。
まず、インドネシアにあるバリ島をオススメしました。バリ島はアジア屈指のビーチリゾートの一つです。プール付きの広いVILAにリーズナブルに泊まることもでき、アートや寺院など、見所満載のスポットもたくさんあります。彼女が好きそうな雑貨屋さんもたくさんあり、ショッピングも楽しめます。しかし、彼女の行きたい時期は11月。雨季でした。雨はきらいと、彼女は言います。バリ島のベストシーズンは、4月〜10月の乾季です。私は、雨音が好きなので、雨季のバリ島にも行きたくなりますが。。。。
彼女を印象づけたのは、腕につけていた、ターコイズブルーのブレスレット。きっと、お気に入りなのだと思いました。
『トルコはどうですか?』
『トルコ!?。。。。』きょとん。
ブルー。トルコのイスタンブールにある荘厳で美しいブルーモスク、トルコ石のターコイズ。どこか、エキゾチックで、クールな印象の彼女にぴったりです。初めてなので、添乗員付きのコースで、安心して参加できるように。
『検討してみます。』
彼女は、そう言って帰って行きました。
後日。『トルコにします。』と電話がありました。『家族も、賛成してくれました。』彼女の笑顔を電話越しに見た気がしました。
Smiycle