top of page
執筆者の写真Maiko

57歳、女性。「第二の人生はブータンで」

更新日:2020年11月6日



夕方近く、1人の女性が来店してきた。中肉中背、身長は158cmくらい、髪はショートカットで、ジーンズにオフホワイトのシャツそれから綺麗な藍色のスカーフ。



いつもの様に、私はパソコンとにらめっこ。横にはコーヒーを置いて。デスクには、パンプレットや世界地図が整頓されて並んでいる。



女性は、私の前に真っ直ぐに歩いて来た。狭い店舗だけれど、入り口を正面にL字型にスタッフのデスクが並べてあって、私の他にも彼女が選べる席は他に3席ほどあった。おそらく、入り口の扉が開いた瞬間に私と目が合ったからだと思う。



店内は、向日葵や麦わら帽子の夏の装飾から、紅葉やカボチャなどの秋の装飾へと変わった頃で、忙しなく、慌ただしい旅行会社の夏の終わりを告げていた。



「ブータンまでの航空券をお願いしたいのですが。」 利発そうな女性は、テキパキとオーダーする。



ブータンと言えば、航空券のみでの入国は難しく、パッケージツアーとして参加する必要があると認識している。ブータンには、ブータン政府が決めている、他国とは違う特殊な旅行システムがある。旅行会社を通じてVISAを取得したり、現地の1日当りの滞在費の徴収や現地人ガイドの手配、ホテルなど、簡単にチケットだけ買って行ける国ではない。



その旨を、女性へ丁寧に伝えた。



「はい。知っています。私は現地に知り合いの人がいて、その人に頼んでいますし、インビテーションレターもあります。なので、入国云々に関しては、心配しないで下さい。自分で手続き出来ています。航空券の手配のみお願いしたいです。ブータンへの航空券を手配できる旅行会社は限られていますよね?御社では手配可能だと調べました。」



女性の方が何倍もブータンに対する知識量を持っていたので、安心した。入国できそうもないチケットを無責任に販売することはできないし、自分が知り得る限りの情報をお客様に伝えることは、旅行手配の大前提である。



さて。



ブータン行きのチケット。初体験。



初めての手配は、勝手も分からず、ドキドキするもの。私は、嬉しかった。たぶん、これから先もブータンへの航空券を手配する機会には、そうそう恵まれないと思ったからだ。 しかし、ブータン。チケットの手配も特殊で、動揺はしていた。私の前に、シャンっと背筋を伸ばして座っている、女性を不安にさせないよう、私は動揺を悟られないように、澄まし顔で調べる。



ブータンへは、直行便はない。ブータンの唯一の国際空港であるパロへは、バンコクかデリー、カトマンズから行くことになる。パロは西ブータンに位置しており、ブータンの首都ティンプーへも車で1時間程で行ける。



女性は、バンコクでの乗継ぎを希望していた。日本からバンコク、バンコクからパロの航空券を調べる。バンコクーパロ区間は、ブータンの国営航空会社であるドゥルック・エアー(ロイヤル・ブータン航空)、ドゥルック・エアーは、通常私達が使っていた、航空券検索予約システムCRSではスケジュールや空席を見ることができなかった。もちろん、予約もできない。これは、異例中の異例。



直接、ドゥルック・エアーの日本の代理店とやり取りをして手配をした。日本ーバンコク区間は、タイ国際航空のチケットを通常のCRSを使った方法で。



成田ーバンコクーパロの接続がフライトスケジュール上、同日では不可能だったため、バンコクで1泊することになった、バンコクのホテル、それからあまり旅慣れていないからということで、バンコクの空港からホテルまでの送迎も手配した。


一番コンパクトで手頃な送迎の車を選びながら、私は違和感を感じていた。

バンコクの空港からホテルまでの移動も心配する、慎重派の女性が1人でブータンかぁ。



一通りの手配の道筋が見え、落ち着いてきた時、私たちは話はじめた。


「お一人で、ブータンへ行かれるんですね」


「そう。実はね、1度ツアーでブータンへ行って、その時の現地のガイドさんと親しくなったのよ。私ね、小学校の教師をしていて、定年したらブータンで何かできることがあるかもしれないから、今回は、そのガイドさんと下見にブータンを巡ることになっているの。旦那も娘も好きにすればって感じだしね」笑顔で話す。



「そんなに、気に入ったんですか!?」驚きを隠せない私。



「とっても良かったの。でも、あなたも気に入ると思うわ。なんかあなた、雰囲気がブータンと合ってるから、うんそうそう。」女性は妙に納得したように肯きながら話す。


えっ!田舎くさいってことかしらと、私の隠しきれない野暮ったい感じを見抜かれた気もしたが、そう言われて嬉しかった。


「そうだ、これ、この前作ったのあげるわ」


小さな、和紙で作った赤い花柄の表紙のメモ帳をそっと手にのせてくれた。


あったかい気持ちになる。


女性が言ったように、果たして本当に、私とブータンがお似合いなのか。


自分で確かめに必ずブータンへ行こう。




Smiycle



閲覧数:17回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


bottom of page