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執筆者の写真Maiko

ソウルの夜は、熱く熱く、過ぎて行く。

更新日:2020年10月16日



私は、酒飲みだ。風邪で声が枯れて出社すると、愛すべき後輩が「酒焼けですか?」と何くわぬ顔で聞いてくる。



そんな私が、大酒飲みの同僚とソウルへ行った。同僚と言っても、歳は4つ上。韓国好きの彼女に連れられて、あちこち回って、飲んだくれて。



後にも先にも、こんな飲んだくれの旅を私はしたことがない。相手が彼女だったからできたこと。



羽田発の全日空、午前便を手配して、昼にはソウルの金浦空港に着いた。朝早いフライトだからと彼女は、蒲田のホテルで前泊をしようと提案する。仕事を終えて乗り慣れて無い、満杯の京浜東北線で蒲田のホテルに向かう。先にホテルいた彼女はすでにほろ酔いだった。私も、キリンのグリーンラベルを飲んで、ビジネスホテルのベッドで眠る。



翌朝、羽田空港で旅の始まりに乾杯して、飛行機でも、もちろん飲んで、昼ごはんは、ソウルの繁華街である明洞(ミョンドン)で。明洞ど真ん中にあるロイヤルホテル、その真向かいにある1階がセブンイレブンになっている雑居ビルの2階のお店でソルロンタンを頂く。ソルロンタンは、乳白色をしたスープで、朝からお酒を飲んでいた私たちに優しかった。



ロイヤルホテル横にある、セントラルホテル明洞にチェックインし、しばし昼寝。夕方早い時間から、明洞でサムギョプサルを食べて、飲んで、それから、ソウルにある学生街、麻浦(マポ)に移動してクルクル巻きになった焼き肉を食べて、また飲んで、帰りにセブンイレブンでチャミスルを買って、飲んで。



焼き肉屋をはしごしたことも、後にも先にもこの時だけ。



翌朝は、後輩が言っていた様に、私の声はガラガラだった。



朝起きて、水を飲んで。ホテルのすぐそばにあった、庶民的な小店でキンパを食べて、ソウルのトレンドのお店が立ち並ぶ狎鴎亭(アックジョン)へ向かった。プラプラした後、新沙の食堂でカンジャンケジャンを食べて、また飲んで。



ここで、食べたカンジャンケジャンが忘れられないほどおいしくて、チャミスルとの相性も抜群で、人生最高と思ってしまった。



夜は、ネオン輝く東大門市場まで移動して、タッカンマリ通りで熱々のタッカマンマリを食べて、飲んで。


愛を語る。


「人を本当に愛していたら、好きになったら、どんなことをしても手に入れたいと思うのが、本当だ。自分以外の人が側にいていいとか嘘だ。」


「あんたはね、逃げているだけ、カッコつけてるんじゃないよ。」



酔っぱらった、彼女が私に言ってくる。色で表すと彼女は赤で、私は青で。



「好きな人が幸せだったらそこに自分はいなくても、私はいいけどね。」と呟いたことから、このお説教は始まった。



「あんたの言ってることが、全然わからんし、伝わらん!!」

と尚も彼女は言ってくる。



ソウルで過ごした夜は熱く、思い出深く、韓国の情気がそうさせるのか、お酒なのか、旅の妙なのか。あの、熱気溢れるソウルの夜に時々かえりたいと思う。



ソウルの熱い夜を一緒に過ごした日から、10年近く経って、彼女は自分の愛する人を手に入れたし、私はひとりでいるし。



大酒飲みの、赤と青の愛のセオリーは、案外、芯を食っていたのかもと思ってしまう。



Smiycle

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